本日はSLAP損傷(肩関節窩上関節唇複合損傷)についてお話します。

●関節唇とは?

関節窩(関節のくぼみ)の縁を取り巻くようについている線維性の軟骨で、関節の安定性に寄与している組織です。

その関節唇が肩関節にも存在し損傷してしまうものをSLAP損傷といいます。

肩関節唇は膝半月板と同じく、関節の動きをスムーズに誘導する役割と、骨同士がぶつかる衝撃を和らげる働きをしています。

 

●SLAP損傷とは?

関節唇の後上方から前上方にかけての損傷のことをいいます。野球での投球やバレーボールでのアタック動作などオーバーヘッドスポーツの選手に多く発生します。

肩周囲では上腕二頭筋腱が上方関節唇に付着しています。

SLAP 損傷では動作時の負荷が二頭筋腱を牽引及び回旋することで関節唇が引っ張られて、肩関節から剥離してしまいます。

 

●症状は?

投球時に手からボールを離す前後に痛みが出て、上腕に放散痛がでます。「あの一球で痛みが出た」と訴える選手が多いです。バレーやバドミントンでも同様です。

野球などのスポーツではテイクバックを大きくとって肩を強く張って投げるような動作や、フォロースルーなどで引っ張られる(引っこ抜かれる)ような動作などで受傷しやすいとされています。

また、コケて強く手をついたり、コンタクトプレーで強く捻られたりしても受傷します。

 

●なにで判断する?

レントゲンではわからず、MRI検査でもはっきりしないことが多いです。

診察するとある姿勢で特に疼痛を強く訴えます。確実な診断には関節内視鏡が必要です。

 

治療法は?

・急性期は安静とアイシングが主になりますが、基本SLAP損傷は自然治癒が困難と言われています。

・保存療法で損傷部位への負担を軽減することで症状が軽快させることは可能です。

・肩関節の可動域向上や肩関節後方のストレッチが効果的です。

・復帰にあたり体幹筋力向上や肩甲骨・体幹の動きの可動域拡大、股関節の柔軟性の向上が大切になります。

※肩関節のみに負担をかけるのを軽減するために全身のコンディションを整えることが大切になります。